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(有)伊東工務店
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「季節のはがき」2018.4.24

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 座敷


障子に濾過(ろか)された光は間の静けさと、無限の時の流れを表しているかのようです。燭台の炎はときおり思い出したように揺らぎ、その姿は旗が揺れなびくように見えてきます。

床脇(とこわき)は座敷に斜に迫り出すという危うく大胆な構成をとり、揚屋(あげや)建築でなければ出来ない洗練された姿の、座敷飾りとなっています。

(揚屋(あげや)建築とは貸し宴会場のことです。)(とこわきとは、床の間の右手に並ぶ飾り棚などが納まる場所)

燭台の灯影(ほかげ)が揺らめくとき、中袋の黒の鳥の子に蒔かれた金砂(きんしゃ)の雲霞(うんか)模様は、妖しく煌めいて妖艶な魅力を滲ませてくる。

蠱惑(こわく)とは妖しく艶やかに惹きつける悩殺する色気をいいます。間は灯に照らされた闇の色を艶やかに描き、この座敷の翳(かげ)が日本の美学の共通の背景にあることを実感させている。私たちは「闇」を条件に成立する日本の空間の失われた旋律、生活、習慣、しつらいの美学を大切にしたいと考えています。

用の美である日本の芸術品はその全てが薄暗い室内で鑑賞されることを前提に制作されています。屏風、襖絵、唐紙、襖の引手、欄間、天井、書院、掛け軸、花器、香炉、座卓、器、はし。などなどあらゆる生活の道具や笹色紅(メタリックグリーン)の口紅、化粧、衣装、料理などに及びます。

昭和九年の随筆、陰翳礼讃は 文学者谷崎潤一郎によってあぶり出された、日本美学の前提条件の暗がりと闇を見事に描きだしています。

今、流行りの和モダンのモダンという部分には和のテイストに意外性のある、大胆な現代化への意匠があって新しい光の使い方の提案が多く、照明による際立ちの描き方の新奇性が見えています。ただ同じ空間意匠が10年、20年後に輝きが失われることなく古典的な姿になっているのかは別です。実用性、先進性、提案性、豊さへの予感、背景の日本的存在感と完成度の高さが未来に判断される条件となるのかも知れません。照明という第四の建築の進化の時代が来たと言えます。

随筆「陰翳礼讃 」昭和九年、文学者谷崎潤一郎の、その文章表現力は秀逸であり、私はこれを越えた座敷空間、障子の文章に出会ったことはありません。建築設計や造形、デザインを目指す人は古典文学と共に避けて通ることのない文学作品であると思います。