豊 饒
 
豊 饒
縹緲と漂う遥かな海濤の響き
濃い藍色の彩りを纏う蒼潤な陰影。
杜は豊饒の予感に満ち早暁の光に瑶曳する。
森韻に霧む造形は古の旋律に輝き憧憬に結晶する。
私たち伊東工務店は自然の濃度に均衡する
空間の響きを大切にしたいと考えています。

宇治橋は戊亥(北西)から巽(南東)へ向って渡されています。この森 のはるか彼方にある大海の波濤の響きが雲間から渺乎(びょうこ)とし て漂っています。神域の森は手つかづの自然であり、溶闇を払う暁と未 だ濃い藍色の彩りを纏う湿潤な森はまもなく早朝の光に包まれてきま す。幽邃(ゆうすい)の陰翳(いんえい)に湿り気を帯びた豊かさが蠱 惑的(こわくてき)に感じられる森、早朝の光が差し込んでくると此処 は一気にその鮮やかさを増し、実りの季節の予感は、朝日になびいて 清々しい風とともに伝わってくるかのようです。神韻縹緲(しんいん ひょうびょう)、その気配は全体に流れる古の旋律の中に滲み、濃い空 気感の変化の中で美しく奏でられています。河梁と鳥居がつくる結界の 心象は古典的な様式の活力が備わり鮮麗に見えてきます。この風景は憧 憬の一枚として脳裏に刻まれ、ここを訪づれる人々の思い出に記憶され ます。 建築空間というのはその風土につつまれ敷地や森全体に点在する建物配 置を含んでいます。計画はこの自然を恐れ敬い従うという姿にあると 言って良いと考えます。さらにその空間を流れ包むような計画を「旋 律」と表現しました。写真はその一部分なのですが、此岸と彼岸の結ぶ 河梁に日本的な民族の発想をみることができます。 自然の濃度に均衡するという意味は、この旋律に従って五感が調和し間 全体の空気感と場の濃度の変化均衡を言っています。 造形の響きは心象へ訴えかけてくる旋律のさびの部分のことです。河梁 の此岸と彼岸の空気感の違いをやや飛躍して濃度ということで表現しま した。表現を変えれば、神域と結ぶ河梁は靄気(あいき)に滲んで間は 濃度に緊張し憧憬に結晶する。古の旋律に普遍の活力を備え、間に緊張 する空間の響きから様式の普遍の活力を強く感じます。写真は、空間の 最も理解しやすい場所からの撮影としてあります。余白に漂う玲瓏(れ いろう)とした陰翳(いんえい)はこの国を代表する空間のひとつの造 形表現であると思います。                                       
撮影:平成19年10月15日 
撮影場所:伊勢神宮宇治 橋付近
豊饒(ほうじょう)縹緲(ひょうびょう)海濤(かいとう)蒼潤(そう じゅん)早暁(そうぎょう)瑶曳(ようえい) 森韻(しんいん)憧憬(しょうけい)
 
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